ダブリンからヘルシンキへ〜北欧の旅〜No.2|アルヴァ・アアルト邸

ヨーロッパ
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こんばんは!!ヘルシンキ〜北欧の旅〜No.2です!本日は『アルヴァ・アアルト邸』についてご紹介していきます。No.1の記事では、アアルトが創設した家具ブランド”アルテック”とコラボした『ホテルヘルカ』について紹介しています。▼ぜひ、あわせてご覧ください。

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アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)

フィンランド国籍の建築家
1898年2月3日-1976年5月11日(78歳没)

著名な建築物

建築物以外の主な作品

このようにアアルトは、生前に多くの著名な作品を残していきました。北欧の近代建築家として、もっとも影響力があった1人であると言われています。

今回は、著名建築物の中でも、アアルト自身の自邸兼アトリエとなった『アアルト自邸』に行って参りましたのでご紹介していきます。

アルヴァ・アアルト自邸 概要

アルヴァ・アアルトが妻アイノ・アアルトと共に設計し1936年に完成させました。この建物は、夫妻の自邸兼アトリエとなりました。自然の素材を使い、シンプルなデザインにする事で、モダン建築をソフトに表現しました。また、夫妻は自邸を設計することにより、様々な素材や工法を試すこともできました。

同じ地区のティーリマキ通り(Tiilimäki)にアトリエが完成する1955年までは、この建物がアアルトの設計事務所として使われていました。アアルトは1976年に亡くなるまでこの家で暮らし、その後は後妻のエリッサ、そして彼の親族が住んでいました。建造物保護法で守られているこの建物は、現在、『アルヴァ・アアルト財団』の所有するミュージアムの内の一つで、一年を通してガイド付きツアーでご見学頂けます。また、自邸内にはミュージアムショップもあります。

この建物にアトリエと居住スペース、2つの用途があることは外観からも見て取れますアトリエの外装は、間口が狭くレンガ表面を漆喰で仕上げています。窓の配置からは機能主義の考えを取り入れている事がはっきりとわかります。居住スペースの外装には薄く塗装された小割りの板が使われています。この建物の屋根は平らで南に面した大きなテラスがあります。

道路側から見ると閉鎖的ですが、室内は開放的になるように考慮して設計されています。内外装ともに、仕事場とプライベート空間では使用する素材を変える事で差別化されています。

アルヴァ・アアルト財団 HPより 

住所Riihitie 20, 00330 Helsinki, Finland
ヘルシンキ中央駅より北西に5km。
もちろんバスで行くことも可能ですが、我々はヘルシンキの街並みを楽しむことも兼ねて約1時間かけて歩いて向かいました!

市街地からアアルト邸までの道沿いにて(2022/4/30)

道中、想定外のアップダウンがあり心が折れそうになり…(笑)さらには、近隣の住宅がこれまた想定外でした。『ん!?団地に迷い込んだ!?巨匠の家はどこにあるの!?』私の予想では、近隣の住宅も2階建程度で周囲の景色がよく見渡せるような住宅街に佇んでいると思っていました。

しかし冷静に考えば、アアルト邸が竣工したのは1936年。今から86年前に遡ります。まわりの景観が変わっていて当然のことで、その中でもこの名建築を守り続けて下さることがより尊いことなのだと実感しました!当時は、人の手がほとんど入らない自然が残っており、1940年代までは、海が見えていたという驚きの事実がありました。

そんな不安を抱えながらも、美しい街並みや穏やかな海に癒されつつ、歩を進めその時は来ました!このように突如として顔を見せてくれたときには、ついに来たか!と。感動したことを思い出します。

ツアー料金大人 €30(約4,100円)学生・シニア€15(約2000円)18歳未満 無料

ツアーは、基本的に英語またはフィンランド語にて実施されますが、追加で€150を支払うことでプライベートの日本語ツアーを選択することも可能のようです。ハンナさんという日本語が堪能な方が、スタッフのうちの1人にいらっしゃるようです。チケット購入時の備考欄に、日本語を希望する旨を記載することで、メールにて返事が返ってきます。

今回我々は、英語のツアーを選択しましたが、ゆっくり丁寧に説明して下さるため、大方の内容は理解できました。また、個別でハンナさんからメールを頂戴し、「メールでの回答になりますが、ツアー前後にいつでも日本語で質問して下さい」と丁寧な対応をしていただきました。

定休日月曜日・祝日 ※必ずしも祝日が休みというわけではなさそうです。予約の際は公式HPをご確認ください。

ここまでの情報は▶︎こちらの『アルヴァ・アアルト財団』HPからご確認いただけます。(日本語表記あり)

アアルト自邸 - Visit Alvar Aalto
1934年アイノとアルヴァ・アアルトはヘルシンキのムンキニエミ地区(Munkkiniemi)のリーヒティエ通り(Riihitie)の自然豊かな場所に土地を購入し、自分たちの住居を設計し始めました。1936年に完成したこの建物はアアルト夫妻の自邸、兼アトリエとなりました。夫妻は自然の素材を使い、シンプルなデザインにする事...

アルヴァ・アアルト自邸 見どころ

皆さん『北欧デザイン』と聞いて思い浮かべるものは何でしょうか?恐らく多くの方が、大手家具メーカーのIKEA(スウェーデン)をはじめとした、カラフルで洗練されたお洒落なデザインを想像すると思います。『北欧デザイン』は、今や日本でもお馴染みの“人気ジャンル”ですよね。

主な特徴は、明るさとシンプルさ。その理由は、北欧の日照時間の短さにあります。特に冬の寒さは厳しく、年間を通じて建物内で過ごす時間が長いのです。そのため、北欧の人々は、建物内に明るくシンプルで快適なデザインを追求したと言われています。

『アアルト邸』からは、そんな北欧建築の形態や素材・テクスチャを知ることが出来ました!さすがは、『北欧の賢人』と称えられた偉人の傑作だと感じます。それでは、早速見ていきましょう!!!

【外観】

リーヒティエ通り建物北側(2022/4/30)

道路側からみるとかなり閉鎖的で無機質な印象を受けました。これからどんな世界が広がるのか、期待に胸が弾みます!!建物右側がアトリエ。中央・左側が住居スペースです。

建物南側(2022/4/30)

こちらは建物南側、中庭から撮影しました。道路側からの外観とは雰囲気が異なり、外に開けた印象を受けます。黒で塗装された羽目板漆喰で仕上げられた美しいホワイトレンガ、そしてシンプルに仕上げられた飴色の建具全てのバランスが美しく、あたたかみのある優しい雰囲気を感じられます。また、この日は突き抜けるような青空が更に素晴らしいコントラストを見せてくれました!ラッキーです(^^)

この建物が完成した当時の日本は、昭和初期です。パッと想像しただけでも、北欧建築の歴史が深く素晴らしいものであったか、改めて感銘を受けました。

【アトリエスペース】

吹き抜け西側の大きな窓が、アトリエ内を明るく演出しています。夕方には、北欧では貴重な西日が差し込みます。日本の住宅における窓のサッシは、アルミの銀色でどこか冷たいクールな印象を受けますが、このように木の格子になるだけで一気にあたたかみが増しますね!

吹き抜け2階部分の茶色い壁は、植物を編み込んだものです。どことなく日本の畳を感じます。自然の素材感をこんな身近に感じながら、設計をしていたのですね。

レンガの暖炉が、いかにも北国ですね。左奥の小部屋は図書室です。ここで働くアアルトやスタッフの方は、調べ物をする時に図書室を利用していたのでしょうか。こんな職場で働いてみたいものです(^^)

アアルトの作業机です。腰壁に設けられた暖房と窓から取り入れられる日差しが暖かそうです。アアルトは、ここでどんなことを思いながら過ごしていたのでしょう。あの巨匠が過ごした場所に自分が立っているなんて、夢のようでした。

スタッフの方の作業机です。

【住居スペース(1階)

リビングルーム。引き戸の向こうはアトリエです。段差と襖(ふすま)により明確にアトリエスペースとの分離が図られています。欧州で襖は珍しいですが、襖で空間を分けるという日本の形式を取り入れたとも言われています。日本を訪れたことはないというアアルトですが、当時の在フィンランド日本大使と親交があり、彼の作品は日本文化の影響を受けているようです。リビング全体は、落ち着いた色合いの空間で、ゼブラ柄のアームチェアタンクが特に目を引きます。家具・照明の多くは、アアルトやアイノ(前妻)、エリッサ(妻)がデザインしたものです。今でもアアルトの意思を継ぐアルテック社によって、販売されておりますので、ぜひチェックしてみてください!

ダイニングルーム。大きな窓から中庭を望むことが出来ます。カーテンではなく、すだれを採用していることにも日本を感じます。完全に遮光せずに、ほんのり光を感じられるすだれは美しいです。アアルト夫妻もすだれを気に入っていたのでしょう。日本人として嬉しく思います。食器棚でも引き戸を採用しているのは、スペースの有効活用を考慮した上だと思われます。このようにアアルト夫妻は、自邸の設計を通して、様々なデザインや空間活用にチャレンジしていたことが伺えますね!

まるで美術館ですよね!アアルト夫妻は、『暮らしに必要な家具とは何か』を追求し、シンプルかつ機能的でデザイン性に優れた素晴らしい家具を生み出しました。自分達の考案した”すべて”に包まれながら生活するのは、どんな気持ちなのでしょう。尊敬の念を抱かずにはいられません。

ル・コルヴィジェ作

右下のサインに見覚えがあり、すぐに目を奪われました。そうです。『近代建築の三大巨匠』のうちの1人!と言われる伝説の建築家『ル・コルヴィジェ』がアアルトの妻エリッサのために贈った絵です。『えぇ〜〜!!!!どんな世界線だ!!!!!あのコルヴィジェがエリッサに絵を贈って、その絵がそのまま、こんな無防備に飾ってある????』頭の中がハテナで埋め尽くされたと同時に、ものすごく感動しました。以前に、東京の国立西洋美術館でコルヴィジェの展示会に訪れたのですが、そこでみた彼の絵画と同じ雰囲気を感じたからです。

【多数のオブジェのある静物】筆者にて模写途中

これは私が模写しているもので、色付けが途中で申し訳ないのですが、彼の描く絵画はこのような雰囲気です。さすが世界を代表する巨匠同士の関係性ですよね。こんな近くでコルヴィジェの絵を鑑賞できたことがとても幸せでした。

【住居スペース(2階)】

2階には夫婦の寝室や子供部屋・談話室(2階ホール)・浴室などがあります。やはりどの空間も素敵で、色合いもデザインももっと見ていたいです。特に興味深かったのは、右下の写真。小部屋のトップライトです。

浴室前の廊下にもトップライトがありました。日本の一般的な住宅で見るトップライトの多くは四角形の枠で、いかにも天井に設けられた窓です。しかし、このトップライトはまるで偶然にぽっかり天井に開いた穴のような。とても抽象的ですが…無機質ではない、ナチュラルさを感じられらるそんな美しいトップライトです。

しかし、トップライトが設けられた部分には当然ですが、照明がありません。天気の悪い日や夜は、真っ暗なのかな…?どこか別のところから光が届くように設計されてるのかな?と夜のアアルト邸も見学してみたくなりました。

階段の手すりの細さには驚きました。通常28㍉〜32㍉程度が握りやすいとされておりますが、アアルト邸の手すりは恐らく28㍉以下でした。なのに、握りやすい。壁との距離も握った感覚も良い!手すりを適切なピッチで設置し、固定させるブラケットを見てください(右上写真)。量産型の金物ブラケットを見過ぎたせいなのでしょうか。とてもとても自然で柔らかくて、あたたく美しく違和感がない。とにかく、細部にまで拘り抜いたアアルト夫妻の傑作に感動しました。

【お土産ショップ】

アアルト邸内に事務所が設けられているのですが、そこの一角がこのようなお土産ショップになっていました。アアルトに関する本や定規、三角スケール、ノート、紙ナプキン、テキスタイルをあしらったバッグなど品揃えが良く、見ているだけでも楽しかったです♪

オススメは、私も購入しました『日本語版の解説本』です。アアルト自邸とアトリエの2冊を購入しました。一冊€10で、中には作品の解説はもちろん、図面やスケッチ、過去の写真などがおさめられており、買ってよかったと思える本でした。

【その他】

スタッキングチェア(積み重ねることができる椅子のこと)やアアルト考案のテキスタイル(布製品における柄のこと)、アイノ(アアルト妻)がデザインしたグラスなどなど。見どころを絞るのが難しい程、たくさんのデザインや美しいディテールに溢れています。

終わりに

いかがでしたでしょうか?私自身、本ブログを描きながら今回の素晴らしい体験を改めて振り返ることができ本当に良かったです。

どんな建築物も芸術も、それを見る人によって着眼点感想も異なります。私個人の感想だけでは勿体ないくらい素晴らしい作品ばかりです。ここまで読んで下さった皆様におかれましては、ぜひご自分の目で『暮らしを追求した』素晴らしい建築作品をご覧になって欲しいです!

それでは、本日はこの辺で。おやすみなさいませ!

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